髪の毛は無数の繊維の集まり
髪の毛は頭から1本の繊維が生えてきている訳ではありません。コルテックスという無数の細かい繊維の集合体です。厳密に言うとコルテックスは、もっと細かい繊維の集合ではありますが今回は割愛します。
一つの繊維の長さは約0.8~1mmで、厚みは約25分の1と細かいものです。
その繊維が約256個集まって髪の毛を構成しますが、あくまでも髪の毛の長さ0.8~1mmのもので256個なので単純計算で10cmの髪の毛では25,600個の繊維の集合体となります。
女性の髪の毛の長さの平均は分かりませんが、肩ぐらいの長さで30cmほどなので髪の毛1本は76,800個の繊維の集合体となります。

ちなみに髪の毛は約10万本はえていると言われているので、単純な計算をすると76,800,000,000本の繊維が集合しています。
では、この細かい繊維はどのように繋がっているかという事を見ていきましょう。
1つの主鎖結合と3つの側鎖結合
髪の毛はポリペプチド結合という主鎖の縦の繋がりと弱い横の繋がりの側鎖結合が3種類存在します。
主鎖結合は縮毛矯正を行う際に知識として必要となりますが今回は割愛します。
今はカラー、パーマを通常に行う程度では切れない繋がりとだけ覚えて頂ければ構いません。
今回は側鎖結合に注目して説明をしていきます。
側鎖結合は先ほど書いた様に主鎖と比べて弱い繋がりです。

その中で一番弱い繋がりで一番数が多いものは水素結合というものです。
濡れると切れて、乾かすと繋がる結合です。実はこの結合が約7割を占めます。
ちゃんと乾かさなかったり、夏場の湿気で髪が広がるのは水素結合が関係しています。
ブローが上手い人やアイロン操作が上手い人は、この水素結合の扱いが上手い人です。
次に多いのがイオン結合です。この結合は約2割を占めます。
髪の毛の等電点pH4.5~5.5で一番強い結合になり、そこから酸やアルカリに傾くと結合が切れます。
基本的には日常生活で極端な酸に傾くことはありません。ただ日常でも紫外線を浴びたり、海やプールへ行く、あまり良くないシャンプーを使うなどするとアルカリに傾きます。
昨日のシャンプー、トリートメントの設計で酸性のものが良いと書いた理由は上記の理由です。
最後にケラチンが関わるシスチン結合で、約1割を占めます。
還元剤と言われるパーマ剤に配合されている成分を使用しないと基本的には切れる事はありません。
数は少ないですが、髪の毛の基本的な形を決めている重要な側鎖結合です。
傷んでいる髪の毛にはPPTと言われる補修成分が多いシャンプー、トリートメントを使う事をお勧めします。
繋がりを意識するだけでも変わる事
このように髪の毛の繋がりは主鎖、側鎖に分かれ、側鎖は3つに分かれています。
これらが無数の繊維を繋げ1本の髪の毛を構成しています。
美容室に行かない限り、側鎖の水素結合以外は極端に変化をさせることは難しいですが、一つ一つ上記したような事を気を付けるだけでも髪の毛を綺麗に保つことが出来ます。
具体的には酸性のシャンプー、トリートメントでイオン結合を保つことや、濡れた髪の毛は早めに乾かす事、ヘアオイルなどのアウトバストリートメントを使用して髪の毛が無駄に水分を吸わない様にして水素結合を保つことです。

美容師さんはぜひ3つの側鎖結合と髪の毛が無数の細かい繊維で構成されていることを頭の中に入れてイメージして頂ければと思います。